横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2000年12月19日 |
「判決」 先々週、この欄で取り上げたテーマを、どうしても、もう一度書いておきたい。今月、東京で開かれた旧日本軍の慰安婦制度を裁いた「女性国際戦犯法廷」のことである。私にとって、怒り、涙し、感動し、今までの人生で最高に凝縮した5日間だった。 最終日の12月12日、国連の旧ユーゴ国際戦犯法廷前所長のマクドナルド裁判長(米国)が、判決要旨を読み上げた。 「戦争中の慰安婦制度は、天皇を最高司令官とする軍・政府当局によって制度化され、準備・管理された奴隷システムである。これは、1907年、戦争下でのすべての人の尊重を定めたハーグ条約41条に違反し、1921年の人身売買禁止条約に違反し、1930年のILO(国際労働機関)の強制労働に関する条約に違反し、1926年の奴隷禁止条約に違反し、当時の国際慣習法に違反する」 この判決によって、旧日本軍の慰安婦制度は、戦時下における性奴隷制であるということを、国際法に照らせられて法理論的にも明確にされた。 判決後、アジアから集まった64人の、かって慰安婦にされた被害者が壇上にあがった。歴史から排除され、抹殺されかけながら勇気ある声をあげた女性たちの目は涙でぬれていた。 人々が力を合わせれば、たとえ闇に葬られた正義でも、光があてられ、正義がよみがえることをこの法廷は示した。 この日、そこにいた人たちすべてが、二十世紀の最後に、二十世紀の犯罪を裁いたこの歴史的は瞬間に立ち会えたことを、誇りに思ったことだろう。そして、私自身も、二十一世紀に生きる情熱がふつふつと湧いてきた。 判決文は、2001年3月8日、二十一世紀最初の国際女性デーに発表される。 横井久美子(シンガーソングライター) |
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