横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年9月11日
外務省の「誇り」

 一ヶ月振りにアイルランドから帰国して、最初に目にしたニュースは、外務省課長補佐の逮捕事件だった。
 それにしても、ナンデ逮捕されるのは課長補佐ばかりなの?機密費詐欺事件も、ハイヤー代詐欺事件もミーンナ課長補佐だった。テレビで見るくだんの課長補佐は、尊大でゴーマン。いかにも悪いことをやっていそうにテレビは見せている。
 しかし、キャリアと呼ばれる外務官僚は、いまだ誰一人として逮捕されていない。公金横領で懲戒免職の米・デンバー前総領事さえ、外務省は刑事告訴もしていない。
 外務省のキャリアは「外交は国益」と誇り高いと聞く。しかし、これほどの構造的腐敗を生んでいるのは、その外務省が仕事そのものに誇りを失っているからではないか。
 だってそうでしょう。日本外交は、戦後ズーッと日米安保条約という軍事同盟に縛られ、核廃絶、ミサイル防衛構想、地球温暖化防止などの問題で、国際社会から厳しく批判されているアメリカにたいして何もいえない。これでは本当に信念をもった外交官でも、腕のふるいようがない。
 本当の「国益」とは、自国の進路を自ら決める力をもち、世界平和に日本が貢献することだ。
 田中外務大臣様。「外務省改革」は、こうした方向へ日本外交の理念を大臣自ら刷新しないかぎりできないのではないでしょうか。

横井久美子

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