横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年9月18日
戦争ではない道を

アメリカで同時多発テロが起きた日、ワシントンのペンタゴンの近くに住んでいる娘と連絡がつかず、不安な一夜を過した。やっと明け方近く、「無事です」というファックスが入ってホッとした。
 娘の話では、NYの貿易センターと違って、ペンタゴンは郊外にあり、一般市民の被害は少なかったようだ。市民生活は翌日からほぼ平常に戻ったが、ただ、国旗(半旗)を掲げている家が多くなり、メディアも、「報復」とか「戦争」という言葉一色になっていて、こうしてだんだんと戦争になっていくのかしらと不安げだった。
 ブッシュ大統領は「二一世紀最初の戦争」と宣言し、軍事報復の準備を着々とすすめている。
 あんなにも非道で理不尽なテロで、突然命を奪われた遺族の悲しみは計り知れない。米国民はもちろん、世界中から激しい怒りの声があがっているのは当然だ。
 しかし、軍事報復は新たなテロを生み、「憎悪」と「殺し合い」の、果てしない悪循環になる恐れがある。これは中東戦争や北アイルランド紛争でもう経験済みのことだ。
 国境のない国際テロを根絶するためには、人類の全知力をふりしぼって、「二一世紀最初の戦争」の拡大をくい止め、平和を生み出す国際協力を地球規模で広げることこそ必要ではないだろうか。
 あくまでも戦争の道ではない道を!

横井久美子

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