横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年9月25日
イマジン

 先週、米三大ネットワークの一つABCテレビは、貿易センタービルに激突した瞬間の映像を、特別な場合を除いて流さないことを決めたという。「残酷すぎる」「幼児などは映像を見るたびに、新たな激突があったと勘違いする」という理由からだ。
「ダイハード」などのテロにかかわる映画も放映を自粛している。
 一方、米国最大のラジオネットは、テロの被害者の心情を察して、事件後、一五◯曲の放送自粛曲のリストを作った。その中にはジョン・レノンの「イマジン」なども含まれていたという。
 「想像してごらん/天国も地獄もない世界を/国境も宗教もない世界を/すべての人々が世界を分かち合っている」と歌うこの歌が、なぜ、自粛曲の中に含まれるのか。
 「平和とは、我々の背負うべき責任であり、どこかよその代理業者に任せたりするものではない」と、「ラブ&ピース」を訴えていたジョン・レノンの歌は、厭戦気分を広めると放送局が「用心」したのだろうか。国家が戦争体制に入るとき、平和を求
める歌は、必ず弾圧を受けてきた歴史があるからだ。
 しかし、その後、米テレビの有名人総出演による「テロ犠牲者追悼チャリティ」を見ていたら、「イマジン」を歌う歌手もいて、安心した。
 この歌は、卑劣な国際テロとの戦いを呼びかける歌として、いま世界中にこだましてもよい歌ではないだろうか。

横井久美子

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