横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年10月9日 |
戦争では癒されない だれでも、いい音楽に触れると心が癒され、生きる力がわいてくる。それが、七一才にしてなお、魅惑的でダイナミックな歌手であれば、私たちの貰うパワーは計り知れない。 先日、キューバ最高のボレロシンガー、オマーラ・ポルトゥオンドの舞台を見た。彼女は、世界的なキューバブームを巻き起こした映画「ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ」にも、紅一点で出演しているビッグスターだ。 素晴らしい歌はいくつもあったが、最後に彼女が日本語で歌った「さくら」には思わず涙がながれた。オマーラから溢れるばかりの元気を貰った聴衆は、最後は立ち上り、特に、若い人たちは、踊りながら彼女の熱演に答えていた。 音楽は、ただ人を癒すだけではない。生きる喜びと勇気も与えてくれる。 いまだに何千もの命が、ガレキの下にあるニューヨークでは、人々の心を癒すため、さまざまなジャンルの芸術家が自主的に立ち上がっているという。同時多発テロ後、休止していたNYのミュージカルも再開されたというニュースを嬉しく聞いた。 このコラムをここまで書いたとき、米国が、ついにアフガン全土を空爆したことを知った。 しかし、報復戦争によっては、テロをなくすことはできないし、人々の心を癒すことも決してできない。 横井久美子 |
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