横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年10月23日
難民にもなれず、、、

 国連難民高等弁務官事務所の職員として、アフガニスタンのカンダハルで、難民の帰還と保護に携わっていた千田悦子さんの講演を聞いた。 
 今回のテロ事件でやむなく一時帰国している千田さんのアフガンレポートは、今まで、見て、聞いて、読んだどのレポートより心に沁みた。
 「アフガンの人々は、日本にとてもよい感情を持っています。街には日本で廃棄された中古車や楽器、水筒や体重計などがリサイクルされ、生活に役に立っています。時には、日本の楽器から『證城寺の狸ばやし』のメロディが流れることも。靴を脱ぎ、床に寝る生活習慣などはとても日本と似ています。」と素顔の人々の暮しぶりを語る。
 しかし、アフガニスタンは、長期にわたる内戦と旱魃で、すでに国民の三割から五割が、WFP(世界食糧計画)の食糧援助に頼り、おおくの人が餓死寸前の状態にあるという。 
 「今回の空爆で国境は閉鎖され、人々は難民として国境を超えることも出来ない国内避難民になっています。さて、戦争が終わって、国の中に入って見ると、キリングフィールド(殺りくの野)のようになっているのではないかと胸が痛むのです」。
 千田さんの話に、会場を埋めた六◯◯人の人々は、空爆の非道さ、無意味さを痛感した。空爆によっては、けしてテロを根絶することはできない。しかし、軍事攻撃は今日も続く。

横井久美子

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