横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年10月30日 |
テロと海外旅行 先日、懇意にしている旅行会社の若い社員に会ったら、「うちの会社も大変なんですよ。この冬を乗り切れるかどうか、、」と、元気がなかった。今回のテロ事件で、年末年始の海外旅行のキャンセルが相次ぎ、会社の業績が大幅に悪化しているという。 「外務省の海外危険情報も予想外に広く、この『非常時』に、海外旅行などと浮かれている場合じゃないという雰囲気で、業界全体も暗いです」。 海外旅行の解約は、テロ発生から二十日間で、国内大手十一の旅行会社だけでも、七五万人にのぼるという。 今回のテロに続く報復戦争は、テロをなくす方向ではなく、逆に炭疽菌事件など新たなテロの不安を世界中に拡大させている。しかし、「飛行機は怖い」「人の集まる場所は危険」という「恐怖の日常化」こそ、テロリストの”思うつぼ”だろう。 先の青年は「旅は、世界に視野を広げ、人生を豊かにするとびっきりの楽しみですよね。そんな旅の喜びをお客様が取り戻せるようにしたいのです」と、力を込める。 そのためには、テロと報復戦争という憎悪の悪循環を断ち切って、無法なテロリストたちを国際的な裁きの場に追い詰めてゆくしかない。そうしてこそ、私たちは、安心して飛行機に乗り、はるかな大陸へも、地球の裏側へも、世界中どこへでも旅をすることができるのだ。 横井久美子 |
タイトル一覧へ HOME |