横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2001年12月18日
若者とギター

「最近、学校に生ギター(アコースティックギター)を持ってきて、休み時間に歌うのが流行っているのですよ」と、友人の高校の先生が嬉しそうに話す。
 エレキサウンド全盛期の九二年、突如、エレキギターの神様エリック・クラプトンが「アンプラグド」という生ギターのCDを発表し、世界を驚かした。「アンプラグド」というのは文字通りプラグなしの、電気を使わないサウンドを意味する。以来、生ギターは、若者にとって新鮮で、カッコイイ楽器としてジワジワ広がっているようだ。
 全国楽器製造協会の調べでは、昨年の国内での生ギターの販売量は、十二万五千二百八十九本と、十年前の約四倍に急増している。購買者は、電気を使わない音色に癒しを求める女性や旧フォーク世代の中年男性も目立つが、やはり若者が中心だという。
 フォークソング全盛時代には、若者は生ギターを手にし、社会に対する不満や世界の平和への願いを歌にし、街に出て訴えた。簡単なギターコードで誰でも歌えるフォークソングは、人と人を繋いでいく大きな武器でもあった。
 先日の内閣府世論調査で明らかように、長引く不況は、ますます私たちの暮しに暗い影を落としている。
 生ギターが、単に癒しを求める楽器としてではなく、若者が社会の現実に前向きに立ち向かう楽器としてもっと広まればと、フォーク世代の一人として願っている。

横井久美子

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