横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2002年1月8日
ブルカを脱いで

 タリバン崩壊後、メディアは、女性がブルカを脱ぎはじめたことで、アフガニスタンにすっかり自由が訪れたかのように報道している。
 ブルカは、頭から身体全体をすっぽりおおう女性の民族衣装で、タリバンによって外出時に着用を命じられていた。
 ブルカに似た服装は、チャドルともミラーヤとも呼ばれ、エジプトをはじめ広くイスラム世界の女性たちが着用してきた。もともとは強い日差しや砂埃を遮る風土に適した伝統的な服装でもあったのだろう。ところが、いつの時代からかイスラム教では、女性の身体の手首から先と、顔以外はアラウ(恥部)とされ、女性はブルカを強制されてきた。 
 服装はいつもその時代の政治や社会を映し出す鏡だ。しかし、ブルカを脱げばすぐ自由が訪れる訳でもない。宗教や伝統に名を借りて女性を抑圧している政治や社会の仕組みが変らないかぎり、真の自由と平等はやってこない。
 今回発足したアフガン暫定政権の二名の女性閣僚の一人セディキ保健相は、「ブルカは伝統的な慣習であるため、変化に時間はかかるが、すべての女性がブルカを脱いで、男性と一緒に働ける時代が来るべきです」と述べている。
 アフガンの女性たちは、今、ブルカを脱ぎながら、いまだに立ちふさがる何重もの壁を崩そうとしている。世界中の女性たちの熱い視線のなかで。

横井久美子

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