横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2002年1月15日 |
ファッションリーダー つい先日、「世界は彼女の何を評価したかーファッションデザイナー川久保玲の挑戦」というTV番組をみた。 黒一色の革命的なデザインでパリ・コレにデビューして二◯年。強くて美しくて新鮮な服を追求してきた川久保玲の世界。私も彼女のブランド「コム デ ギャルソン」が好きなので興味深かった。 番組は、パリ・コレの映像を交え、彼女を支えるパタンナーの作業現場や、日本独自の素材やアパレルの高い技術力への信頼など、多面的に伝えていた。カメラは、東京青山にある彼女の製作現場にも入ったが、「作品だけが私のすべて」と、インタビューは声だけだった。 彼女の作品には、例えば、男性スーツにドレスを組み合わせたり、あちこち穴をあけた「ボロルック」など、性差を超えた自由が溢れる。何が美しくて、何が健康か、男とは女とは、と既成の価値観を持った私たちに「もっと美しいものはたくさんある」と迫ってくる。二十年前嫌われた黒の「カラスルック」も、今では街でよく見かける。 ファッションを通して、美の概念に挑戦し続ける川久保玲が、ココ・シャネルと並んで二十世紀を代表するデザイナーと言われるのもうなづける。 人間の生活が時代と共に変化するように、人々の美意識や服装の価値観もまた時代とともに変わる。ファッションは、自由な人間精神を表現できる最も身近な手段なのだ。 横井久美子 |
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