横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2002年1月22日
肯定派増加のわけ

 昨年十一月末の民間の調査結果によると「夫は外で妻は家庭に」という性別役割分業を肯定する人が増えたという。二年前に比べ、肯定派は、四四・九%で六・七%増え、特に共働き家庭では十%以上も肯定派が増えたということだ。
 うーん、この共働きでの増加。一見、働いている女性が役割分業を肯定し、専業主婦に「憧れている」ようにも見える。しかし、この数字から見えるのは、役割分業を肯定せざるを得ない女性の労働現場の厳しさではないだろうか。リストラの嵐はまず女性を直撃し、最近では一家の働き手である男性をも襲っている。  
 三年前、労働基準法が改正され、女性も長時間・過密労働、深夜労働に組み込まれた。しかし、それを支える保育所などは充実せず、仕事と家庭の両立の困難性は深刻になっている。実際、私のまわりにも「このまま働いていたら身体はボロボロよ」と、仕事を止めた女性が幾人もいる。
 その上、女性労働者の四七%がパート・臨時・派遣などで、女性パートの時給平均は八八七円。男性の四割にすぎない。また、六三%の職場でパートの一時金はなく、九二%は退職金もない。
 こうして見ると「妻は家庭に」という意識は、この国の経済の仕組みがゆがんでいることの表れと見るべきだ。

横井久美子

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