横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2002年2月26日
差別の壁に風穴

 先週、東京地裁で野村証券の男女差別訴訟の判決があった。各地から傍聴席に入りきれない人が支援に駆け付けた。私も、最前列でその判決を聞いた。
 八年前、野村の十三人の女性が、「同期入社の男性に比べ、賃金や昇格で差別を受けてきた」と訴えた。男性は、どんな人でもどんどん昇格するのに、女性はどんなに能力があってもずっと平社員のまま。賃金格差も年間三百万円から四百万円になる。
 判決は、たった十数分で終了した。しかも、裁判長の声がか細くて聞き取れたのは「棄却」という言葉ばかり。さては「敗訴」かと、一瞬早まってくやし涙が溢れた。
 今回の判決は、男女コース別人事の違法性を改正均等法後の九九年四月一日以降に限定し、それ以前については「棄却」した。しかし、重要な前進があった。はじめて裁判所が企業の人事管理の男女差別を、均等法違反・憲法十四条違反と断罪したことだ。
 翌日、原告の方からメールを頂いた。「今回の裁判は大勝利ではないかと確信しております。日経連の政策に大きな風穴をあけたわけですから。明日はまた、五時起きで本社前でチラシまきです。いつも心に太陽を!」
 さすが、時代の先頭に立って闘ってきた人たちだ。私も、この差別の壁に風穴をあけた判決は、確実に次へのステップになるとさらに心が晴れた。

横井久美子

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