横井久美子 東京新聞「本音のコラム」 2002年3月19日
男の涙は

 桜がほころびはじめ、きのうはウグイスの声を聴いた。いつもなら春の到来に心が緩むのに、一連のムネオ問題がスカッとせず心が晴れない。
 鈴木氏は、反省はしても悪いことはしていないと、涙ながらに弁明したが、男の涙は武器になるどころか、自己保身が見え見えで哀れだ。会見の最後に「家族」を持ち出したのも卑劣だ。いまさら「家族」を利用するなんてと思ったが、「涙」も「家族」もテレビ向けのシナリオだったのだろう。国民の目はごまかせないのに、鈴木氏は、議員辞職もしない。 
 一方、疑惑の共犯であった外務省は、いつのまにか「被害者」を装い、国会で鈴木氏を擁護し、ウソを言った外務官僚や、唯々諾々と言いなりになった役人の罪は不問のまま。ことの発端であるNGO排除問題や機密費問題なども、依然解明されていない。
 しかし、心の晴れない一番の原因は、小泉首相の態度だ。ムネオ問題や加藤元幹事長の問題など、政官業癒着の「自民党政治」が、これほど国民の前に明らかになっても、まるで人ごとのようだ。
 国民は、もう「古い自民党政治」を嫌悪している。もし、小泉首相が「自民党的体質」を自ら「ぶっ潰せ」なかったら、支持率はまだまだ下がるだろう。今回ここまで外務省の腐敗を暴き、追い込んだ国民の怒りは、「トカゲのしっぽ切り」ではもうおさまらない。

横井久美子

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