Kumiko Report 12/6/2002
「楽しそうに正義を語る」

昨夜は、友人の朝日新聞ロスアンゼルス支局長である伊藤千尋さんの10冊目になる著書「人々の声が世界をかえた」の出版パーティ。
六本木の会場には、伊藤さんの活動の幅を物語るように、「コスタリカ平和の会」「ピースボート」「国際ボランティアセンター」などの人たちでいっぱい。私は、「ピースボート」の人たちと司会を担当。伊藤さんは、記事はもちろんその弁舌でも私たちをいつも元気つけるジャーナリストとしては、稀有の才能の持ち主。昨夜も、「伊藤千尋が熱く語る」では、予定を15分もオーバーする熱弁。「伝えたい」というパワーは衰えることを知らず、司会の私は時計とニラメッコ。ますます元気そうで、本人も、「日本にいる時より元気で、白髪もなくなった」と元気いっぱい。

伊藤さんの魅力は、「楽しそうに正義を語る」こと。そして、「人々の声が世界をかえた」のタイトルどおり、世界を変えるのは、一人一人の名もない私、あなただよ、というメッセージを楽天的に伝える。だから、彼の話を聞いていると、自分でもなにかできるかもしれないと元気になる。
「世界戦争」に向かうこの時代、だから意識的な人ほど無力感に陥りやすいこの時代、朝日新聞社としての評価は別として、ジャーナリズムの中心にいる人のメッセージは、人々を元気づける。

しかし、今のジャーナリズム全体はひどい。国益優先の感情的国家主義が日本を覆っていて、象徴的には、「週刊金曜日」の北朝鮮での取材にマスメディア側からも非難の嵐。「おいおいそんなことして自分の首をしめているけど、いいのかよ」と恐ろしい状況だ。国家意志と距離を保つ冷静さがジャーナリズムの原点で、たとえ相手から投げられたエサであっても食いつくのがジャーナリストだと思う。それをどう料理し表現するかは、次の問題だ。この「週刊金曜日」の記事の直後、11月17日、岐阜で本多勝一さんの講演とご一緒だったが、本多さんは、防弾チョッキではなく防刃チョッキを着ていたそうだ。また、主催者は、若い大学生を前列に配置していたという。ひしひしと、こうした国家主義的雰囲気がただよう時代に生きているのだと実感した。

だからなお、伊藤さんの今なお楽しそうに正義を語りつづける姿に、私たちは鮮烈な印象を残すのだろう。
「人々の声で世界をかえよう」

横井久美子

2002年12月6日

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