Kumiko Report 1/8/2003
13年目の総括

お正月のまるまる3日間、私のしたことは、1000本に及ぶカセットテープやMDやDATなどのチェック。

今年の4月1日に音楽センターから発売されるCD6枚組の6枚目は、スペシャルアルバムとして、他のLPで私が歌っている楽曲や未発表の音源を収録する予定。音楽センターのスタッフは、いろいろな音源を追跡調査。たとえば、石田えり主演の映画「翼は心につけて」の主題曲や、都知事選の映画「対決71」の主題歌なども候補に挙がった。そこで、聞かれた。「ところで、一度も世に出ていないオーケストラバックの20周年コンサートは?」
新星日本交響楽団をバックに歌ったこのコンサートで、私は「燃え尽きてしまった」のだから、実際どんなコンサートだったのだろうと興味を持たれた。

実は、恥かしながら私は、この録音を1989年10月13日の記念コンサート以来、一度も聞いていない。それほど「嫌悪」していたともいえるが、さて、整理能力ゼロの私、どこにあるのかも分からない。そこで家中探し回った次第。

13年と2ヶ月ぶりに私はその録音を聞いた。そこには、13年前の、オーケストラに負けまいと、自分を大きく見せようとして、必要以上に気張っている私がいた。主観的に思い込んでいたように、声が出なかったわけではない。逆に声を出し過ぎて、歌の世界が死んでいる。「スゴくみせようとした私」から「ただの私」に戻るには、やはりアイルランドの旅と、その旅を綴った本の出版が必要だったと改めて納得した。

今朝、四国から届いた年賀状に「もう怖いものはない、というようなのびやかな活動に賛意を伝えたいと思います。私にも流れてくる久美子さんのうたのこころに感応できます」と、あった。言われる通り、私は、『ただの私に戻る旅』以来、「これっきりの自分。でも、これ以下でも、これ以上でもない」と、はっきり考えることができるようになった。「ゆるゆるふっくり」流にいえば、「『私』という人間は、豊富な社会的、人間的かかわりのなかにある。その人間的なかかわりのなかにこそ『横井久美子』がいる」と。

89年の20周年に向けて、意気込みも凄かった。その前年88年には、国立芸術小ホールで新星交響楽団の五重奏団と競演し、素敵な音色の歌を歌っている。87年には、同じホールで10曲ほどの私の好きなカントリーソングをバンドアレンジで英語で歌っている。これは、チョット冒険で当時賛否両論あったけれど、今聞いていると楽しい。89年の20周年の歌も最後になるにつれて力が抜けてよくなっている。最後は、拍手が鳴り止まないほどの声援だった。浅はかな私は、こうしたファンの方々の声援は、心に残らず身勝手に落ち込んでいったのだ。

新しい年を迎え、また、35周年企画を来年に控え、13年ぶりに「まぼろしの20周年コンサート」の録音を聴くことができて良かった。
同じ過ちをけして繰り返さないと心に誓った。

横井久美子
2003年1月8日

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