Kumiko Report 6/19/2003
二つの「アメリカ」− ハリソン・フォードってスゴイ!

大好きなBS2のテレビ番組「自らを語る」にハリソン・フォードが出演していた。いつ観ても、この番組に出演する俳優たちを見て思うことは、「アメリカってスゴイ国」ということ。米国一国だけで世界の軍事、経済、金融の支配をもくろんでいるブッシュ政権の「アメリカ」には嫌悪感が増すばかりだけれど、こういう番組を見ているともう一つの「アメリカ」に感嘆する。

番組の中で彼は、「俳優の仕事は物語を語る手伝いをするチームの一員である」と、自分は全体の中の一人であるにすぎないということを2回も強調していた。また「台本をよく読み、訓練することで本物の感情がつかめる」などといい、司会者が、この番組出演者の中で「最高の職人」とハリソン・フォードを褒めていた。

ハリソン・フォードは、社会的活動にも参加し、一昨日、世界の環境会議から帰国したばかりと言っていた。私が一番感心したのは、女子学生が「ハリウッドは、エゴの塊ばかりの集まりなのに、どうしてそんなに謙虚でいられるのですか」という質問をした時。彼は「その質問は必要ないよ」とまず言った。「もう君は答えを持っているし、君はそんなエゴイストにはならないよ」と続けた。そして、「人とのかかわりのなかで、人間として成長できるし、スゴイ仲間がいるから謙虚になれる」と若い質問者を励ましたのだ。

今までこの番組で、これほど質問者に優しい言葉をかけた場面を観た事がない。ウーンマイッタ!スゴイよ、ハリソン・フォードは!そして、ほとんどの俳優が、映画の役柄よりずっとこの番組で話している方が魅力的でよく見えるのは何故だろうと改めて思う。

この数週間、ユダヤ系アメリカ人作家と結婚し、米国在住の芥川賞作家の米谷ふみ子氏が、毎週新聞に「イラク侵攻とアメリカ社会」を連載している。

「『戦場のピアニスト』や『ボウリング・ フォー・コロンバイン』が受賞したのはもちろん優れた作品ではあったが、開戦が逼迫していた状況下で、5000人もいるアカデミー会員の反戦の望みが一票ずつに込められいたことを見逃してはならない。私の夫も会員であるが、この二つと「千と千尋、、』に投票したそうだ。」(6月3日東京新聞)

アメリカは、1950年マッカーシー旋風が吹き荒れ、多くのアカデミー会員が二度とその時代に戻らないようにとの想いが強い。ジェシカ・ラングやショーン・ペンなどハリウッドの映画人たちの反戦行動も頼もしかった。しかし、一方で、その先頭に立っていた女優スーザン・サランドンは、「反戦運動をしたので映画会社の出演の申込がうんと減った。マッカーシー時代のように映画会社の重役たちは、時代の風潮になびいていている」といわれてもいる。

故櫛田ふきさんは「平和は綱引きよ」と言っていた。外から見ているとアメリカの綱引きは、ハリウッドの映画人に見られるように、しぶとい力を発揮して、互角に綱引きをしているように見える。そのしぶとさこそ、アメリカが蓄えてきた「民主主義」の底力ではないか。米谷ふみ子氏のレポートの最後は、友人の言葉として、「私このごろ外国に住んでいるような気がする」という言葉で結んでいる。日本の「平和の綱引き」はどうなんだろう。

横井久美子
2003年6月19日

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