Kumiko Report 7/12/2003 |
長崎幼児殺害事件 自衛隊は人殺しに加担するため海外まで出かけてゆくし、国内では、むごい殺人事件が次々起こるし、暗澹たるおもいで毎日をすごしている。 7月9日、「12歳中一を聴取」という夕刊の記事が出た、同じ夕刊に「『自分以外はバカ』の時代」−バラバラの個人、暗欝な予感ーという吉岡忍氏の文章が載った。 まさにタイムリーでその夜のTVの「ニュース23」でも、事件の報道とあわせて「心の闇」として筑紫哲也氏がこれを紹介していた。 「この国の低迷はまだ始まったばかり、これから本格的に陥没していくのだろう。」 「地域社会と企業社会が蒸発し、人々がばらばらに暮らすようになった」 「不可解な犯罪が多発したのも、地域と企業の双方の磁力が希薄化した地域でだった」 「自分以外はみんなバカなのだから、私たちは誰かに同情したり共感することもなく、まして褒めることもしない。こちらをバカだと思っている他人は他人で、私のことを心配したり、励ましてくれることもない。つまり私たちは、横にいる他者を内側から理解したり、つながっていく契機を持たないまま日々を送りはじめたーそれがこの十余年間におきた、もっとも重苦しい事態ではないだろうか」(7月9日朝日新聞) 事件が12歳の犯行とわかっていない時期に書かれた吉岡氏の警告に納得と同時に、どうしたらいいのだろうかと重い心を引きづっていた時に唖然とする政治家の発言があった。鴻池大臣の「市中引き回し、打ち首」発言である。政府の青少年育成推進本部の副本部長を務める大臣は、テレビの取材でも「勧善懲悪、水戸黄門ですよ。悪いことをしたら罰するのは当然、こんど私の講演会にも来てください」と言ってのけた。大臣の「悪いこと」の中には、政治家が犯す犯罪や犯罪まがいのことは入っていないのだろうか。 長崎県弁護士会は、12日、この発言に対し「青少年問題を担当する大臣とは思えない非常識な発言。憎悪をいたずらに増幅させるのみで、事件の本質のすり替えにもなりかねない」と声明を出した。 12歳少年の犯行は、思春期における「性衝動」をコントロールできない幼児性で、これを生み出したのは親からの過剰期待による「心理的抑圧」と、地域社会の消滅であると、精神科医などの専門家は指摘している。もちろん少年法の対象年齢を引き下げれば済む問題でない。 バラバラの個人、溺愛する母親、仕事だけにうちこむ父親、こうした状況をなくす社会を考えるのが政治家の仕事なのに、森元首相の「子どもを産まない女性を税金で面倒みるのはおかしい」発言。太田議員の「集団レイプは元気があっていい」レイプ容認発言などが続いている。今朝の朝日新聞「私の視点」では、自民党の野田聖子議員が「許しがたい暴言が相次いだ」と批判の声をあげている。あたりまえだ。 吉岡氏の「自分以外はみんなバカ」の時代。確かに私たちは彼が指摘した状況の時代に生きている。しかし、そんな情けない空恐ろしい日本に生きていかなければならないとしたら、私たちは、私は、もっと「誰かを心から心配し、同情し、誰かに共感し、励まし、もっともっと褒めあおう」と覚悟するしかない。 「ミレーの生涯」を読んでいて、19世紀ヨーロッパ自然主義最大の画家の言葉が、この重い心を慰め「覚悟」を励ましてくれた。 「確かに世間には悪人がいるが、善人もいる。一人の善人は多くの悪人の所業の埋め合わせをしてくれるものだ、僕はよく人に助けてもらったのだから、不平をいう筋合いはないよ」 横井久美子 2003年7月12日 |
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