Kumiko Report 7/10/2004 |
「感動劇」の裏にあるものは 曽我ひとみさんという人は、控えめで、余分なことは言わず、情緒的にならず、冷静で好感がもてる。彼女のメッセージの文章は、非常に文学的で、曽我さんという人は、頭のいい人なんだろうと感心している。だから、一日でも早く北朝鮮の家族に再会することを、私も願っていた。 しかし、このマスコミの加熱した報道ぶりはどうだろう。一昔前の「ハイジャック」並みの報道合戦を展開している。日本の取材陣は200人を下らず、約40人もテレビクルーを投入しているテレビ局もあるという。北朝鮮のサービスぶりも際立っていて、出国風景の映像は、すべて朝鮮中央テレビが撮影したものを、フジテレビ系が受信し、NHKなどに配信している。 「静かに暮らせる環境を」という曽我さん自身の願いや、参議院選挙の影響から冷静な報道がもとめられていたのに、やはり、マスコミは「感動劇」に飛びついた。 橋田信介さんの死についてもマスコミは「美談」に群がった。橋田さんの死が、ムハマド君を通じて、イラクと日本の希望の架け橋になったことは事実だが、大手メディアがイラクに記者を派遣しない空白を、メディアは日本に居ながらにして、ムハマド君の映像を撮りまくり、結局、その「美談」は、橋田さんの死の真実やイラク戦争から人々の目をそらす役割をしているのではないだろうか。 9日に発表された朝日新聞の世論調査で、家族再会が決まって小泉内閣の評価が「良くなった」と答えた人は25パーセント。苦戦が予想される与党に対し、カンフル剤になっている。国民誰もが「美談」や「感動劇」には好意を持つのは当然。しかし、私たちは、「感動劇」や「美談」報道にだまされてはいけない。 小泉「戦争内閣」が、もし信任されたら、今後3年間は、総選挙はないと言われる。その3年間に、この日本はどうなって行くのか。一国の首相が、憲法を無視し、国会に、国民にはかることなもなく、海外で多国籍軍に参加すると、勝手に、簡単に、約束してしまう。小泉首相は、アメリカに世界の果てまで従って、自衛隊を戦わせたいのだ。本来マスコミは、「感動劇」に投入する何倍もの力を注ぎ、小泉首相が描く「日本」を検証し、この日本の行く末、この日本の在り方を問う参議院選挙を、多面的に報道するべきだ。 小泉首相の手書きの自民党のポスター「この国を想い この国を創る」を、パロディストのマッド・アマノさんが「あの米国を想い この属国を創る」と、東京新聞の「本音のコラム」で発表したところ、安倍自民党幹事長から「通告書」という名の「脅迫状」が送られ、ホームページなどの削除を求めてきたという。また、自民党に不利な批判をするジャーナリストたちにも通告書で威嚇しているという。アマノ氏は「国民の誰もが感じていることだけに真実を突かれた自民党はたじろいだにちがいない」と言っているが、「感動劇」を演出する裏で、言論弾圧もここまできている。 11日の投票日には、メディアを使って巧妙に国民を操る小泉首相に対し、「国民を甘く見るな!」と、「歴史的大敗北」を突きつけましょう。私は、日本国民として、戦争に反対し、国民の命と生活が守られるよう、大切な1票を使うつもりです。 横井久美子 2004年7月10日 |
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