Kumiko Report 4/3/2005 |
第二回春秋楽座inくにたち・春 今日は快晴で、お花見びよりのお天気だったのに、国立の桜は、まだまだつぼみで残念。第二回目の春秋楽座もたくさんの方にお出でいただき盛況でした。関東在住以外は無料とうたった会ですが、広島、静岡と2名の該当者がいました。 昨日は、川崎で2回も公演し、いよいよ川崎のおやこ劇場の「事前交流会」は、大づめにきていますが、今日は、川崎で毎日しているライブと同じ話や歌で進行してみました。若いお母さんたちを前に私がどんなことをしているか、きっと分かっていただけたと思います。さて、今日の圧巻は、2つの新しい歌を披露したことです。一つはアメリカの教育学者ドロシー・ロー・ノルトの「子ども」。2つ目は峠三吉の「にんげんをかえせ」でした。 「子ども」は、皇太子が紹介して有名になった詩ですが、ちょうど、「事前交流会」を前にしていたので、子育て真っ最中のお母さんたち贈ろうと、前夜、遅くまでかかって曲をつけました。「可愛がられ抱きしめられた子どもは、世界中の愛を感じることを覚える」という最後の詩に「世界中の愛をあつめて」のメロディを使っているのがポイントです。劇場では「世界中の愛をあつめて」は大ヒット曲で、みんなに歌われていて、「子ども」に続いて「世界中の愛をあつめて」を歌うと、みんなが歌ってくれてとても嬉しいです。 「にんげんをかえせ」は、今日、偶然にも、この詩を英訳をされた津田塾大学の早川敦子先生が、駆けつけて下さった。早川さんは、吉永小百合さんが朗読される原爆の詩「第二楽章」の英訳をされ、CDにもされている方です。以前、早川さんとお会いした時、私は、この「にんげんをかえせ」の英訳も含め、メロディをつけて歌いたいといっていたのですが、それが、やっと実現したのです。英詩をつくることで世界に向って「原爆」や「核廃絶」がアピールしたいので、ぜひ、いろんな所で歌ってくださいね、とご挨拶されました。 昨日、事前交流会の合間、毎日、私のギターを持ってついてくれている若い事務局のゆみさんに「にんげんをかえせ」の歌のいきさつについて話していました。「弁護士会館で『にんげんをかえせ』を歌った夜、また、弁護士の池田先生から電話があったの。『あんたの歌とてもよかったよ。若い弁護士が民衆のなかから生まれた歌だ!と興奮して言っているよ』と言われたけど、『民衆』じゃなくて私が夜中まで起きてアレンジしたのにね」と言ったら、ゆみさんが言いました。「横井さん、横井さんが考えたのに『民衆から生まれた』と思ってもらえる歌なんてすごいじゃないですか?」とほめてくれたのです。 若いゆみさんの感性に、私は、驚愕し、私は、自分の利己心を恥じた。そうなのだ、本当にその国の時代と、その国に生きる人々の気持ちを謳う歌は、作者の顔が見えないものではないか。もちろん、「にんげんをかえせ」は、4分の3拍子の『アメージンググレース』を4分の4拍子にし、少しメロディを変え、すでにある詩とすでにあるメロディを結びつけただけで、私自身の新たな創造性はない。「民衆から生まれた歌」と思われたのは、その詩とメロディのなかに、「幾千万の命流れて、われらこの地にあり」というような、人間の深い悲しみや慈しみや祈りが感じられるからだと思う。そして、そう思ってもらえる作品を私が選択し結びつけ歌った、それを言われたのだ。 「35年間歌ってきて、私の身体には、世界中の、日本中の人々の悲しみや怒りや喜びが詰まっている。それは私だけの財産ではない。60代は、その財産を独り占めしないで、私心なく、無私の心で、いただいた人たちに返してゆく」と言っていたのになんという浅はかさ。自分の利己心を恥じた私は、早速、この詩のアレンジ名を「横井久美子」ではなく、「原爆症認定集団訴訟団」とすることにした。そんなことを、久しぶりの人、初めての人、いつも会うひとたちに、語り、歌った「春秋楽座inくにたち・春」でした。 さて、明日はまた、ゆみさんに付き添われて「事前交流会」。この仕事も、「財産を返してゆく」仕事の一つです。 横井久美子 2005年4月3日 |
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