Kumiko Report 1/9/2006
春秋楽座inくにたち・冬

今年の仕事はじめは、春秋楽座inくにたち。1992年からはじめた春秋楽座は、今回で233回目になりました。新年らしく梅の花が飾られ、あの人もこの人も来てくれて、新年らしい華やぎがありました。今年からの新企画は「自らを語り奏でる」。今回のゲストは、バイオリニストの杉田真実さん。ここ数年、私のコンサートに参加してくれて「横井さんの歌にバイオリンが入ってずっとステキになった」といわれている。

「歌って愛して」からはじまって「死んだ男の残したものは」など数曲歌って、真実さんを紹介。真実さんと私が出会ったのは、1998年、アイルランド、リマリック大学の夏のセミナー。真実さんは、武蔵野音大を卒業し、アイリッシュミュージックに惹かれアイルランドに1年間留学。昨年の35周年記念コンサートでお呼びした、サンドラ&ナイルともその時の知り合い。

私の紹介後、真実さんが語りながら奏でてくれました。




真実さんは、クラッシクよりも前に、ユダヤ音楽、ジプシー音楽が好きだったそうで、それを子守唄代わりに聞いていたという。私は「ヘーッ」と思って納得した。だから、アイルランドの音楽に惹かれたり、ポピュラーのジャンルに入る私のバックの演奏ができるのだと。多分、クラッシクだけの勉強をしてきたら、こうした幅広い世界を持つことは出来ない。

真実さんが優しい声で語りながら弾いてくれた曲は
<曲目>
1.サリーガーデン(アイルランド)
2.ロッホ・ローモンド(スコットランド)
3.愛の挨拶(エルガー)
4.二泉映月+蘇州夜曲 華彦釣(中国)+ 服部良一
5.ユダヤの民謡と踊り
6.エストレリータ(ポンセ・メキシコ)
7.スカボロ・フェア(イングランド)+バタフライ+ Mist Covered Mountain +シーベグ&シーモア+オカロランのコンチェルト(以上アイルランド)
<アンコール>
バーバラ・アレン+アフトンの流れ(スコットランド)

という珍しいステキな曲目でした。 バタフライからMist〜までの3曲は、映画「フィオナの海」にも使われていましたが、元々有名でよく弾かれる曲だそうです。

休憩中、素晴らしかった。「こんなステキなバイオリンも聞けるなんて来てよかった」という声、声。

さて、二部で私は、もちろん歌ったのですが、かなり語りました。その内容は「思いあれば伝わる。行動すれば出会う」。実は、今、若者の間で脳科学者の茂木健一郎が人気で、丁度、1月3日の東京新聞に銅版画家の山本容子さんと対談があり、読んだのです。その内容は、いつも私たちが考えていることと同じで、でも、こんな風に脳科学者が言ってくれるととても納得できるのです。それで、記事を抜粋して紹介しました。

「今ようやく人々がクオリア(脳の存在感、質感)を感じる時代になってきていると思うんです。自分がどう感じたかを基準に生きていくとは一番大切だし、それにはある程度トレーニングが要る」
「やっぱり生命の本質って『続く』ことで、脳も心臓と同じで、実はずっと休むことなく動いているです。ひどいめにあってもあきらめないで続けているとそれがプラスになる」
「創造というのは、抑えていたものを外すこと。それが脳にも楽なことなんです。脳が活性化するというのは『印象に残る』ということ」
「言葉でも文学でも絵でも、伝えないと『思い』にならない」
「イメージして感じる力とそれを伝えられる力、それができたら、これからの世の中大丈夫だと思うんです。情報に振り回されないで自分の中にあるものを大切の見つめることをしないと仮想ははぐくめないし、見えてこないと思いますね。気になるというのは、無意識の人間の脳からのメッセージなんです」
「セレンディピティ(偶然の発見に出会う幸運)というものがあるんです。予想できないことに出会えるから人間どんどん新しくなっていく」
「本当に幸運に出会いたかったら、他との違いを大切にしなければなりませんね。異なるものを大事にして、それを表現していくことです」
ちょっと視点は違うかもしれないのですが、私も、ずっと同じように考えていたことがあります。それは、春秋楽座のこと。春秋楽座を企画するとき、誰かが何か言ったり、薦められたり、何かのために開催するというふうには、開催してほしくないと思っていました。「横井久美子を呼びたい!」こう思った瞬間から、すでにイメージはその人の中で完成しているのです。その人がそう思うことが大切なのです。そのイメージを大切にした「思えば簡単にできるライブ」が春秋楽座なのです。茂木健一郎のキーワードは「クオリア」ですが、私は、その脳の感性を、「春秋楽座の発想」に重ねていたのです。

茂木健一郎の本が数冊手元にあります。これから読んでみましょう。「思いあれば伝わる。行動すれば出会う」いい言葉です。併せて私の好きな言葉「独りをおそれず、連帯を忘れず」を心に刻み、2006年を生き抜きましょう。

横井久美子
2006年1月9日



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