Kumiko Report 01/31/2007
No11さようなら南米

1月13日、私たちはベネズエラを後にして帰国しました。私は、今まで世界各地に何十回も出かけましたが、これほど内容の濃い旅は、初めてだったように思います。

それは、チリについては、1973年のアジェンデ政権の崩壊が世界史的出来事として、日本でもベトナム戦争反対運動とあわせて、チリ連帯運動が大きく盛り上がり、私もその中にいたこと。そして、チリは、1990年民政移管、2006年女性大統領の誕生を果たし、今回私たちの旅は、そのチリの30年余の人々の戦いの歴史と再生をこの眼で見ることができたからです。

私は、音楽家としてチリの歌をうたっきて、自分が生きている間にチリ再生をこの眼で見ることができて望外の喜びです。軍事政権によって抹殺されてしまったかのように見えた文化芸術が大地から芽を吹くように「アジェンデ財団」や「ビクトル・ハラ、財団」を創出し、チリ再生のシンボルとなっていました。例え、力によってねじ伏せられたように見えても、必ず民衆の声は「祖国の大地深く叫びがわきおこる」のだと大きく励まされたチリでした。

また、ベネズエラは、チャベス大統領の再選により、さらに「21世紀型社会主義」をすすめています。旧ソ連や北朝鮮など見ている私たちは社会主義の印象はとても悪いのですが、チャベス大統領は、キューバともベトナムとも中国とも違う全く新しい社会主義を謳っています。

「チャベス大統領は、当選するとただちに新憲法を作成した。(中略)この過程は、世界史的にみても注目に値する。これまで、旧国家機構を解体できた革命はすべて暴力革命であった。(中略)世界史的にみても画期的憲法ということができる。すでに述べたように、国家主権としての代議制にもとづく民主制を克服する体制として、人民主権による直接参加の民主共和制を高く掲げた。国民主権と人民主権は、フランス革命以来の民主制のあり方をめぐる対立である。簡単にいえば、国民主権では、一人一人が主権者として存在するとは考えない。国民全体が単一、不可分、譲渡不可の主権=統治権を持つと考える。他方、人民主権では、一人一人の個人が主権者=統治権者として存在する。ベネズエラの憲法は、後者の人民主権の立場に立ち、これまでの資本制の民主制をエリート民主制として批判し、主権者としての人民の参加による新しい民主制の樹立を掲げている。」(「チャベス革命入門」河合恒生・所康弘著/澤田出版)

私は、この本で「国民主権」と「人民主権」という言葉に初めて出会った。だからこの言葉の内容をじゅうぶん分かっていないけれど、この本を読んでさらにチャベスという人はトテツもない人のように思った。旅のあいだ中、過去の歴史上の人物でチャベスは誰に例えられるだろうか、と考えたけれど思いつかない。

「イエス・キリストとドン・キホーテとシモン・ボリーバルの言葉を引用して、3人の考えを世界で実現することが、現在のベネズエラ国民の課題であると、チャベス大統領は、機会あるごに強調している」(「革命のベネズエラ紀行」新藤通弘/新日本出版社)


今回、私たちは、各国で素晴らしい通訳さん、ガイドさんに出会いました。チリでは、チリを愛してやまないミウラさん。チリの歴史をはじめスゴイ博識の彼に「どうしてそんなによくチリのこと知っているの?」と聞くと、「チリが大好きだから日本に帰国した時、神田などの古本屋に行って、チリの本を見つけては読んでいるのです」。彼は、「ピースボート」などのコーディネイトもされ、そのプロフェッショナルな仕事ぶりにツアーの面々も感動。ちょっとオバサン風ですが、海外でこんなにも素晴らしい若い日本人が活躍していることに誇りをもちました。ありがとう!ミウラさん!


そして、ベネズエラでは25歳のエリコさん。お母さんが日本人で、愛知万博にもコンパニオンとして来日。私たちのベネズエラの印象は、エリコさんのおかげで何倍にも良くなりました。彼女は「警察改革のための国家委員会」に属していて、今後、警察がどう変わっていったら良いか、人々に意見を聞きまとめる仕事に参加しているそうです。エリコさんは少数民族地域を担当したと言っていました。チャベス大統領は、医療、教育、福祉など次々と政策を打ち出していますが、その政策への直接の参加者と私たちは出会ったのでした。サンミジャンからの帰りのバスでメンバーが「日本では、チャベス大統領は独裁者になるのではないかと報道されていますがどうですか」と尋ねると、「軍人出身なので私も少し心配です。でも、ベネズエラはこのままでいいはずはありません。私はチャベス大統領に期待します!」との胸のすくような答え。私たちは、ここに「ベネズエラの未来」を見たのでした。また、朝早いため、ホテルが作ってくれたサンドイッチが食べられない、というと「貧しい人にあげる」と言って持って言ってくれたその姿にも感動、感動!

二度と来る事はないと思ったベネズエラですが、チャベス革命の行方に期待し見届けるために、また、エリコさんが政府の要職?につくのではないかと期待し、5年後位にもう一度行ってみようねと皆さんと話しました。

短い滞在でしたが、新自由主義と真っ向からたたかう南米で、私たちは、熱い息吹を感じ、その息吹を少しでも日本へ届けたいと願って帰国しました。この私のレポートがその一端となれば嬉しいです。

レポートの写真は、ご一緒した田中さん原沢さん前田さん、そして横井の写真を使いました。お礼申し上げます。また、今回の南米ツアーには二つの危機がありましたが、班長さんははじめ参加者の皆さんの素晴らしいチームワークで無事帰国できました。皆さん本当にありがとうございました。また、私の無謀?ともいえる南米ツアーの企画を受けてフロンティア的努力をして下さった富士国際旅行社とご一緒した原沢さん。君がいたから成功したぜ!と、感謝!



飛行機から、さようならベネズエラ、そして南米!

横井久美子
2007年1月31日     

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